2012年2月25日土曜日

【機会費用】ひろゆき氏の指摘に足りないもの【機会収入】

ひろゆき氏のブログエントリ(円安で個人支出は確実に増えて、給料は増えないけど、バラ色らしいです。 : ひろゆき@オープンSNS)を読んで納得しそうになったので忘備録替わりに彼の指摘のどこが間違っていたか書いておく。それは一言でいうと「機会費用(収入)」についての考察が足りないのだ。言い換えるなら目に見える会計的な費用や収入しか計算に入れていないのだ。





例えばパナソニックとサムスンが北米市場で3Dテレビを売りたいと考えている。為替レートは1ドル=100円=1000ウォンと便宜上しておく。現在の北米での売上を同じ程度とする。ブランド力、価格、輸送費、テレビの質などの諸条件は同じものと仮定する。現在の売上をグラフ化すると以下のようになる。同じ売上だから当然こうなる。

 ではここで1ドル=120円=800ウォンに為替レートが動いたことにしてみよう。要はドルに対して円安、ウォン高だ。では売上の概要は為替の影響によって以下になるのだろうか?
ひろゆき氏の言っている状態はこういうことだ。1ドル70円だろうが、80円だろうが、120円だろうが売上はそんなに変わらないよねというのが彼の主張(だよね?)。そして円安によって為替差益と為替損益が出るのは当たり前だが、このグラフが間違っていることは消費者の行動を描写しきれていないところだ。具体的にいえばドル高円安でアメリカ人の財布の紐はゆるくなり、パナソニックは円安のおかげでアメリカ人に安く売れる。そしてそれはウォン高に苦しむサムスンに対して優位であるはずだ。よって正確なグラフは以下になる。

 為替の影響だけでなく、それに付随したパナソニックのテレビの価格の下落によってアメリカ人はもっとパナソニック製品を買うはずなのだ。赤色の枠を見てもらいたい。本来サムスンのテレビを買うはずの層がパナソニックの売上に貢献しているのだ。売上が移転している。このサムスンからパナソニックへの売上の増加分を機会費用(機会収入)という。私の説明は回りくどいのでわかりやすい例をだそう。スラムダンクの山王戦を思い出すといいかもしれない。

4点分の働き。逆転へのアドバイス

小学生のときこれの意味がよくわからなかった。だって4点分の働きって言っても実際の得点は2点でしょ?って思ってた。しかし機会費用というのを経済学で習ってから自分の言葉で説明することができるようになった。なるほど、相対的なものなのだと。

安西先生の言う4点=山王からゴールをさせないこと(ー2点がなくなる)+奪ったボールでゴールを奪う(+2点)

話を戻す。パナソニックにとっての4点とは為替損益での売上増という2点とその為替レートの優位によっての機会収入の増加の2点の2つだ。ひろゆき氏の議論には後者が欠けていたのだ。

では機会費用をもっと別の言葉でわかりやすく言ってみると「負け犬の遠吠え」だ。つまり「円高じゃなかったらもっと伸びるべき売上」というのが機会費用だ。それは会計的に見えるものではなく、構造的にようやくぼんやり把握できる程度のものなのだ。今期は赤字と決算で発表され他社の増えた売上と比べながら、為替の影響がなければ我社はこんなにもうまくやれたんだぞという説明ほど虚しいものはない。しかも今回用いた例は典型的な経済学の机上の空論だ。実際に円安ドル高になれば、アメリカ人の実質所得の増加で彼らはテレビではなく車を買うかもしれない。多くの経済変数が複雑に絡み合ってきてこの機会費用がどれほどのものか掌握するのは実際のところ不可能だ。それでもアカデミックな場では計量経済学、実際の企業活動の場ではマーケティングなる部隊が躍起になって条件が変わればどれほどの売上が見込めるかというのを計算している。

重要な概念だと思うが経済学では流す程度にしか学ばないし、機会費用について延々と書いた本もあまり知らない。頭のいい人はぜひいい論文や参考図書を教えてください。ぱっと思いつく2つの本を紹介したい。






高卒で働くか大学に行くかどうかの選択は機会費用を考えるもっとも卑近な例と言えよう。この選択をするときは大学の学費だけでなく、その後の収入の差まで考える必要があるがその収入の差が機会費用である。機会費用の章だけかいつまんで読んでもいいだろう。





 
機会費用と比較優位は表裏一体に語られる。貿易の収穫逓増をモデル化したクルーグマンのエッセンスがつまった本であり、グローバリゼーションへの批判に反論するコラムもあり国際経済学をまじめに勉強する上でも読み応えがあるはずだ。貿易が遠い話と思うなら、2国間相互モデルを夫婦の家事や仕事の分担の話に置き換えて考えるとわかりやすいかもしれない。

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